先日ユニセフが発表した子供の幸福度についてのレポートは、実にショッキングな結果で、SNSなどでもだいぶ話題になりました。日本は身体的な健康度は1位なのに、精神的幸福度は38か国中で37位。https://www.unicef.or.jp/news/2020/0196.html
この結果をどう受け止めたらいいか、心の健康に携わる者の一人として、深く考えさせられました。 オランダやノルウェーなどと何が違っているのでしょうか。いったい日本の子どもたちに何が起こっているのでしょうか。
ユニセフのレポートによると、日本の子どもは生活への満足度が低く、自殺率が高く、いじめの問題を抱えていて、友達を作る自信にも欠けているのだそうです。
若い人が自殺してしまう、これほど悲しいことはありません。
でも確かに、カウンセリングをしていると、生きる意味が分からない、いなくなりたい、消えてしまいたい、そんな訴えを若い人からよく聞くのです。
彼、彼女らの話をよく聞いてみると、空気を読んで、周りから浮かない、悪目立ちしないキャラを作っている、自分がどう思われるかをコントロールし、自分を抑えている、そんな若い人たちの実態について話してくれます。またこうした若い人たちは、とても傷つきやすく、お互いに傷つけあわないように気遣いあい、深いかかわりを避けてしまうことも多いようです。
そんなふうに自分を抑えているうちに、自分らしさの感覚とともに、生きる実感さえ見失ってしまう。傷ついた時に支え合える関係性も築けていないので、人生で必然的に出会う困難を、乗り越えることができなくなってしまうのです。
周りに合わせて自分を抑えることは、日本の「和を大切にする」文化とも関連しているのかもしれません。昨今の新型コロナ対応でも、諸外国がロックダウンをする中、厳しく規制をせずとも「自粛」で対策ができてしまうほど、日本人は自分を抑えることが上手でした。でもそれは、裏を返せば、個人より集団や「場」を優先するということもつながっていて、個人の幸福が後回しにされやすいということでもあります。
カウンセリングを進めていってわかることは、自分らしく自己肯定できるようになっても、それは心配されるような、空気の読めない自分勝手な人になることでは全くない、ということです。自分らしさを出さず抑えるように育つということは、その過程で心に傷を負うことでもあります。その傷つきから癒され、回復すると、自然体でリラックスした感じになって、周りの人ともっとよい関係を築けるようになります。
多分こうした苦しさ、生きづらさを抱えている若い人たちは、それが相談できること、解決し得るということを知りません。子どもたち、若い人たちが幸福に成長できるように、カウンセリングやメンタルヘルスのサービスについての理解を広め、普及させていくことの必要性を強く感じています。